| 六.相続の放棄 | ||||||
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被相続人が借金だけ残して死亡した場合に、相続人が単純承認すると、自己の固有財産を処分してまで被相続人の負担していた債務を弁済する義務が生じます。 このような場合に、被相続人の債務を引き継がない手段として、相続の放棄があります。 | ||||||
| 1.相続の放棄 | ||||||
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相続が開始されると、被相続人の権利および義務は包括的に相続人に帰属することになりますが、相続の放棄は、これを自己の意思によって拒絶することをいいます。 この点について、民法では、相続の放棄をした人は、その相続に関してはじめから相続人ではなかったものとみなしています。 したがって、相続を放棄した場合には、被相続人のマイナス財産(借金や未払金など)だけでなく、プラス財産(土地や建物)も承継することはありません。また、債務だけを放棄して、財産だけを承継するということもできません。 このような相続の放棄は、通常、相続財産が債務超過の場合に行われますが、債務超過でなくても相続人の自由意思によって相続を放棄することができます。 | ||||||
| 2.相続放棄の手続 | ||||||
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相続の放棄をする場合には、自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内にその旨を家庭裁判所に申し出なければなりません(民915[1],938)。 この3ヶ月の期間を熟慮期間といいますが、相続財産の全貌がわからないケースの場合には、期間の延長を家庭裁判所に請求することができます。 なお、限定承認の場合には、相続人全員が限定承認する必要がありますが、相続の放棄は、単独でも認められます。 | ||||||
| 3.相続の放棄の効果 | ||||||
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相続を放棄した場合には、その放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったものとみなされます(民939)。 したがって、相続した人の本来の相続分は、他の共同相続人に移転することになります。 | ||||||
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前ページ下のケースの場合、Aが放棄しなかった場合の相続分は、妻が1/2、子供A、B、C、D、がそれぞれ1/8(1/2×1/4)となります。 これに対して、Aが放棄した場合には、相続人は妻と子供B、C、D、となり、妻の相続分は1/2で変わりませんが、子供B、C、D、の相続分は1/6(1/2×1/3)となります。 なお、相続欠格または廃除と違い、相続を放棄した場合には、Aの直系卑属A’は代襲相続することができません。 | ||||||
| 4.相続の放棄と相続税の関係 | ||||||
| 相続を放棄した場合には、相続人とみなされないことになっていますが、相続税には、相続人に適用のない制度として、次のものがあります。 | ||||||
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(1)生命保険金、死亡退職金の非課税 生命保険金、死亡退職金はそれぞれ法定相続人×500万円までは非課税となっています。しかし、この非課税は相続人だけに適用されるものですから、相続を放棄した者が生命保険金や退職金を受取った場合には、全額が相続税の対象となります。 | ||||||
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(2)債務控除の不適用 相続税の計算においては、被相続人の財産から債務を差し引くことになっていますが(これを債務控除といいます)、この債務控除が認められるのは相続人だけです。したがって、相続を放棄したものが債務を負担しても、相続税の計算上、控除されません。ただし、葬式費用については、相続を放棄した者であっても控除が認められます。 | ||||||
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(3)相次相続控除の不適用 被相続人が10年以内に相続によって財産を取得し、相続税を納めていた場合には、被相続人が納めた相続税は、今回の相続税から控除することができる制度があります。これを相次相続控除といいますが、この制度は相続人しか適用がなく、相続を放棄した者には適用されません。 | ||||||
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(4)その他 相続により取得した立木の評価は、立木の評価額の85%で評価することができますが、相続を放棄した場合には、このような評価減はありません。 | ||||||
| 5.限定承認とは | ||||||
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人が死亡した場合には、その人の財産上の一切の権利義務は相続人に承継されます。 これは、土地や建物などのプラス財産だけでなく、借入金や未払金などのマイナス財産も含めて、承継されることになるのです。 したがって、プラス財産の方がマイナス財産よりも多ければ単純承認しても特に問題はありませんが、マイナスの財産の方が多かった場合には、相続の放棄をしない限り相続人は自分の固有財産を処分してまで被相続人の債務を弁済する義務があります。 ところで、相続財産がプラスなのかマイナスなのか不明な場合には、簡単には相続を承認するか放棄するかを判断することができません。そこで、このような場合に民法では、相続によって得た財産の範囲において、被相続人の債務を承継するという限定承認の制度が設けられています。 つまり、限定承認の場合には、被相続人の財産を換価して債務を弁済します。そして残った財産があれば、相続人が相続することになりますが、逆に弁済しきれない債務が残った場合には、相続人は弁済する責任を負いません(民922)。 | ||||||
| 6.限定承認の手続 | ||||||
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(1)裁判所への申述 限定承認を受ける場合には、相続人全員が、自己のために相続の開始があったことを知った日から、3ヶ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に申述しなければなりせん。 したがって、相続人が数人いる場合に、一人でも限定承認に賛成しなければ、他の相続人は限定承認することができません(民923,924)。 | ||||||
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(2)限定承認の手続 限定承認は、財産を換価し、債務を弁済して、相続財産を清算する行為です。
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| 7.限定承認における税金 | ||||||
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限定承認は、資産を処分して換価し、債務を弁済する手続を行います。したがって、資産の処分の段階において、譲渡所得税が課されます。 例えば、土地を売却して換価した場合には、被相続人が土地を売却したものとみなして、その売却利益に対して、譲渡所得税が発生します。そして、譲渡所得税を差し引いた残りが、債務の弁済に充てられることになります。したがって相続人自身の財産から譲渡所得税を納めるといったことはありません。 なお、債務を弁済して残った財産があるときは、相続人が相続することになります。したがって遺産の基礎控除額を上回る財産が残ったときは、相続税がかかります。 |