三.相続人の確定 | ||||||||||||||||||||
1.相続人の範囲 | ||||||||||||||||||||
相続人になれる人の範囲は、民法で定められており、これを法定相続人といいます。 法定相続人には、被相続人の配偶者(配偶者相続人)と被相続人の血族関係者で一定のもの(血族相続人)に限られています。 | ||||||||||||||||||||
(1)配偶者相続人 婚姻届がなされている配偶者は常に相続人となります。婚姻届がなされていない内縁の夫婦では、いくら長年連れ添っていても相続人にはなれません(民890)。 | ||||||||||||||||||||
(2)血族相続人とその順位 相続人になれる血族関係者とその順位は次のように定められています(民887,889)。 [1]第1順位…被相続人の子などの直系卑属 [2]第2順位…被相続人の父母、祖父母といった直系尊属 [3]第3順位…被相続人の兄弟姉妹 血族相続人は、まず第1順位の相続人から優先的に相続人となり、第1順位の相続人がいなければ、第2順位の血族関係者が相続人になり、第2順位の相続人がいないときは第3順位の血族関係者が相続人となります。そして第1順位から第3順位までの相続人がいない場合には、配偶者が単独で相続することになります。 | ||||||||||||||||||||
(3)代襲相続人 血族相続人のうち、被相続人の子および兄弟姉妹で、被相続人より先に死亡しているなど相続権を失っている場合には、その子供(孫または甥、姪)が、代わって相続人になることができます(次の[1]〜[3])。これを代襲相続人といいます。 [1]相続人となるべき者が被相続人の死亡前に死亡している場合 [2]相続人となるべき者が相続欠格者の場合 [3]相続人となるべき者が相続の廃除を受けたとき なお、相続を放棄した者、配偶者、直系尊属には代襲相続は認められていません。 また、代襲相続人となるべき孫について[1]〜[3]の事由に該当し相続権を失ったときは、さらにその子(曾孫)まで代襲相続(再代襲相続)が認められています(民887)。 | ||||||||||||||||||||
2.相続分 | ||||||||||||||||||||
相続分は遺言により指定することができます。これを指定相続分といいますが、遺言による相続分の指定がなかった場合には、民法で定める相続分(法定相続分)によることになります。 | ||||||||||||||||||||
(1)法定相続分 民法で定める法定相続分は次のようになっています(民900)。 | ||||||||||||||||||||
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(2)均分相続 同順位の血族相続人が数人いるときの各人の相続分は原則として均等となります。例えば、相続人が配偶者と子供が2人のときは、子供の相続分は、それぞれ1/2×1/2=1/4となります。 | ||||||||||||||||||||
(3)均分相続の例外 [1]認知した子の相続分 認知した非嫡出子(内縁の妻との間に生まれた子)の相続分は、嫡出子(正妻の子供) の相続分の2分の1となります。 なお、非嫡出子で認知されていなければ、相続権はありません。 [2]半血兄弟姉妹の相続分 父母の一方のみ同じくする半血兄弟姉妹の相続分は父母の両方を同じくする全血兄弟姉 妹の相続分の2分の1となります。 | ||||||||||||||||||||
(4)その他 [1]相続の放棄があった場合には、その放棄をした者ははじめから相続人ではないものと みなされます。 [2]養子は法律上の実子とみなされますので、実子と同じ相続分を持つことになります。 | ||||||||||||||||||||
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法定相続人の範囲と順位 | ||||||||||||||||||||
3.欠格者 | ||||||||||||||||||||
(1)欠格者とは 欠格者とは次に掲げる人をいいます(民891)。 | ||||||||||||||||||||
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被相続人のなかに上記に該当する人がいる場合には他の相続人など(利害関係者)の主張により欠格者とすることができます。特別な手続や訴えをする必要はありません。 | ||||||||||||||||||||
(2)欠格の効果 欠格者となった相続人は相続開始のときから欠格者として取扱われ、相続する権利を失うことになります。しかし、欠格者の子(直系卑属)の代襲相続権には影響を与えませんので、欠格者の子(直系卑属)が代襲して相続財産を取得することができます。 また、被相続人が欠格者に対して遺言により財産を遺贈することになっていたとしても欠格者は遺贈により財産を取得することができません。 | ||||||||||||||||||||
(3)欠格の取消し(相続権の回復) 被相続人を殺そうとして処罰されたり、先順位や同順位の相続人を殺したりまたは殺そうとして処罰された場合には、その相続人は欠格者となります。しかし、その後被相続人が自分の意思で欠格者となった相続人を許し欠格の取消しをした場合には、その欠格を許された相続人は相続財産を取得することができます。 | ||||||||||||||||||||
4.廃除者 | ||||||||||||||||||||
(1)廃除者とは 廃除者とは、遺留分を有する相続人が被相続人に対して虐待をし、あるいは重大な侮辱を加えたとき、または相続人として目に余る非行をした場合のその相続人をいいます。 | ||||||||||||||||||||
ただし、遺留分を有さない相続人(兄弟姉妹)が前述した行為をしても廃除者となることはありません。もし遺留分を有さない相続人が前述した行為をしたようなときは、遺言により相続分をゼロとする指定をすれば廃除することができます。 | ||||||||||||||||||||
(2)廃除の方法 前述した(1)の行為をした遺留分を有する相続人がいる場合には、被相続人が生前に家庭裁判所に申立てるか、被相続人の遺言により遺言執行者が家庭裁判所に申立てることになります。 | ||||||||||||||||||||
(3)廃除の効果 廃除者となった相続人は相続開始のときから廃除者として取扱われ、相続する権利を失うことになります。しかし、廃除者の子(直系卑属)の代襲相続権には影響を与えないので、廃除者の子(直系卑属)が代襲して相続財産を取得することができます。 また、被相続人が廃除者に対して遺言により財産を遺贈することになっている場合には、欠格者の場合と異なり、廃除者は遺贈財産を取得することができます。 | ||||||||||||||||||||
5.行為能力のない相続人とは | ||||||||||||||||||||
行為能力のない相続人とは次に掲げる人をいいます。
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6.未成年者 | ||||||||||||||||||||
相続が発生し被相続人の子供または孫が相続人となるようなケースでは未成年者が相続人となることがよくあります。このような場合には一般に親権者が相続手続を行うことになります(次ページ図)。 親権者には未成年者の親がなります(民818)。図の場合には、法定相続人が被相続人の配偶者、孫A、孫B、子Cの4人となります。子Cの親権者は被相続人の配偶者となりますが、配偶者と子Cは双方とも相続権があるために遺産分割について双方とも権利主張ができる点で利益相反の関係にあります。また、孫Bの親権者は配偶者B´となり、孫Aには親権者がいないことになります。孫Bの相続手続は配偶者B´がすれば良いのですが、孫Aと子Cの相続手続は親(親権者)がすることはできません。 | ||||||||||||||||||||
(1)子Cの相続手続をする人 子Cの親権者は被相続人の配偶者なのですが、子Cも配偶者も被相続人の法定相続人となるため、両者は利益相反の関係にあり配偶者が子Cの相続手続をすることができません。この場合には親権者である被相続人の配偶者は、家庭裁判所に子Cの特別代理人の選出を請求しなければなりません。請求するときには特別代理人の候補者を選出しますが、通常親族を候補者として特別代理人の選出を請求しているようです。 家庭裁判所が選出した特別代理人は子Cの相続手続(相続の放棄や遺産分割など)をすることになります。 | ||||||||||||||||||||
(2)孫Aの相続手続をする人 親権者いない場合において遺言で後見人の指定がないときは、親族または債権者等の利害関係人が家庭裁判所に対し後見人選出の申立てをすることになります(民841)。 家庭裁判所が選出した後見人は孫Aの相続手続をすることになります。また被相続人の遺言で後見人の指定がされているときは、その指定された後見人が孫Aの相続手続をすることになります。 ![]() | ||||||||||||||||||||
7.禁治産者 | ||||||||||||||||||||
精神障害のために合理的な判断ができない人(禁治産者)が相続人となった場合には、次に掲げる人がその相続手続をすることになります。 | ||||||||||||||||||||
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8.準禁治産者 | ||||||||||||||||||||
心身耗弱者または浪費者が相続人となった場合には、次に掲げる人が準禁治産者の相続手続をすることになります。 | ||||||||||||||||||||
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9.後見人・保佐人になれない人 | ||||||||||||||||||||
次に掲げる人は、後見人・保佐人になることはできません。
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10.特別代理人選任申立書 | ||||||||||||||||||||
(1)相続人が未成年者だったとき 相続人または包括受遺者のなかに未成年者がいるとき、ふつう代理人には親権者である親がなります。しかしその親も同時に相続人である場合、親は子どもの代理人にはなれません。子どもと代理人の間に利害関係ができてしまうからです。同じ理由から、ほかの相続人や包括受遺者も代理人になることはできません。 このようなときは、家庭裁判所にその子どもと利益が相反しない人を特別代理人に選任してもらいます。 | ||||||||||||||||||||
(2)申し立てのしかた
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