二.遺言書の発見
 
 
1.遺言は最優先される
 
 遺言は亡くなった人の最終的な意思表示ですから、すべての分割方法のなかで最優先で執行されます。相続に関心が高まっている昨今、ともするとしこりを残しがちな肉親同士の争いを避けるため、遺言を書いておく人は年々着実に増えています。  その書式が正しいと検認され、指定内容が正確であれば、遺言に従った遺言相続が執行されます。正しく書かれていなければ、せっかくの遺言も生かされないのです。  遺言があるかぎり、たとえ法定相続分を無視した指定相続分になっていても、原則的にそれに従わなくてはなりません。  “原則的に”というのは、ある法定相続人が最低限もらえる遺産(遺留分)すらもらえなかったとき、その相続人は遺留分の請求をする法的権利をもっているからです。どのような内容の遺言でも、そのとおりに執行されるわけではありません。  なお、このように最優先される遺言ですが、相続人全員の意見が一致すれば、遺言に従わなくてもかまわないのです。  たとえば、遺言に「遺産の分割は均分に」とあっても、ほかの兄弟姉妹が、生活の苦しい次女に少し多めに分けようと決めたり、財産の大半を相続させると遺言された長男が、ほかの相続人に配慮し、遺言での指定分以下を相続してもよいのです。
 
2.遺言がなければ話し合いで分ける
 
 遺言がないときは、相続人全員で遺産の分割方法を話し合います。このとき全員の合意があれば、法定相続で分けても別の分けかたでもかまいません。このように話し合いによる遺産分割を協議分割といいます。  協議分割は相続人全員の合意が不可欠ですが、意見がまとまらないからといっても多数決は有効ではありません。反対する人が1人でもいれば、分割協議は成り立たないからです。
 
3.話し合いが不調なら法定相続に
 
 たがいの思惑が行き違って話がまとまらないとき、分割の基準となるのが法定相続分です。そもそも、「法定相続人」や「法定相続分」というのは、相続の際のさまざまなトラブルを避けるため法律で一定の基準をつくったものです。  話し合いによる分割にせよ、法定相続による分割にせよ、協議が成立したら、遺産の分割内容を記した遺産分割協議書を作成し、全員が署名押印します。これは、相続確定後に、不動産、有価証券、預金などの名義変更の際に必要となる重要な書類です。
 
4.遺言書を勝手に開封してはいけない
 
 遺言を見つけたときは、つい内容が気になり開封してみたくなるものです。しかし、遺言は遺産分割の際に最優先される重要な文書です。相続開始後に遺言を発見したら、すぐに家庭裁判所の検認を受けなくてはなりません。遺言を保管していた人にも同様の義務があります。  検認の目的は、遺言の存在をはっきりさせて紛失を避け、記載内容を確認して偽造・変造されるのを防ぐためです。開封しても遺言が無効になるわけではありませんが、トラブルを避けるためにも、不動産の相続登記をするためにも検認は不可欠です。もしも検認前に開封したり遺言を執行したりすると、5万円の過料に処せられます。  ただし、原本が公証人役場に保管されている公正証書遺言は、検認の必要はありません。
 
5.検認の日に立ち会って確認
 
 検認申し立てをすると、家庭裁判所から、相続人とそのほかの利害関係者に検認期日が通知されます。  当日、相続人とそのほかの利害関係者の立ち会いのもとで、遺言の記載内容が確認され、「検認調書」が作成されます。後日、検認に立ち会わなかった関係者には検認された旨の通知がきます。
 
6.検認申し立ての仕方
 
申し立て用紙
 「遺言書検認申立書」に「相続人等目録」を添付。ともに申し立て先にある
申し立て人
 遺言書の発見者または保管者
申し立て先
 相続開始地を管轄する家庭裁判所
必要なもの
 [1]申し立て人の戸籍謄本
 [2]遺言者の戸(除)籍謄本
 [3]相続人全員の戸籍謄本
 [4]受遺者の戸籍謄本
 [5]印鑑
 *遺言書は検認期日に持参する
期限
 相続開始後できるだけ早く、発見後すぐ